難易度 | 作業時間 | 予算 |
---|---|---|
中級 | 15分〜 | 1000円〜 |
コレさえ読めばあなたもブレーキフルードの交換ができる!
注意点を理解すればブレーキフルードの交換は難しい作業ではありません。ポイントはブレーキ復帰とエア抜きをしっかりと行うこと。
この記事ではブレーキフルードの交換方法、交換時期、必要な道具、作業上の注意点などを紹介しています。
・ブレーキフルードの交換方法、ポイントが知りたい方
・交換時期、交換しないとどうなるのか知りたい方
・必要な道具や費用を知りたい方
ブレーキフルードの基礎知識
役割
ブレーキフルードは、油圧式ブレーキに充填されている液体のことです。ブレーキオイルとも呼ばれます。
マスターシリンダー・ブレーキホース・ブレーキキャリパーに隙間なく充填されており、ブレーキレバーが握られる(踏まれる)ことで圧力がかかりブレーキを作動させています。
交換しないとどうなる?
-
ブレーキフルードには以下の性質が要求されます。
- 粘性が低い
- 圧力による体積の変化が小さい
- -50℃でも凍らず、200℃でも沸騰しない
- ゴム部品などへの攻撃性がない
特に注目して欲しいのが3番目の「沸点」に関する部分。
交換を怠るとフルード内の水分の割合が増え沸点が下がり、「ベーパーロック現象」が発生しやすくなります。
ベーパーロック現象
ブレーキで発生する熱によりフルードや水分が沸騰し、内部に気泡が発生し「エア噛み」を引き起こす。
ホースラインにエアが混入してしまうと、圧力をかけることができずブレーキが全く効かなくなり大変危険です。
種類・規格
規格 | 主成分 | ドライ沸点 | ウェット沸点 |
---|---|---|---|
DOT3 | グリコール | 205℃以上 | 140℃以上 |
DOT4 | グリコール | 230℃以上 | 155℃以上 |
DOT5.1 | グリコール | 260℃以上 | 180℃以上 |
DOT5 | シリコーン | 260℃以上 | 180℃以上 |
ブレーキフルードは規格が4種類、主成分が2種類あります。(バイクでBF-6は見かけないので省略しています。)
主成分はDOT5のみシリコーン系で、他は全てグリコール系です。
規格も沸点による違いなのでそこまで複雑ではありません。
ほとんどの国産車はDOT4が指定であり、特殊な用途を除けば変更する必要はありません。
混ぜることはできない!
グリコール系・シリコーン系は混ざることができず分離してしまいます。またシリコーン系は指定がなければ使用することはできません。
必ずメーカー指定の規格を使用しましょう。
交換時期はどれくらい?
- 1〜2年ごとに交換
ブレーキフルードは、経過年数で交換しましょう。
走行距離で変えるものではありませんが、ブレーキを多用する方は1年での交換をオススメします。。
ウェット沸点に注目しよう
ブレーキフルードには「ドライ沸点/ウェット沸点」というものがあります。
フルードには空気中の水分を吸収する吸湿性があり、沸点の低い水分の割合が増えることで沸点が下がります。そのため規格により以下に定められています。
- ドライ沸点 :吸湿率0%の数値(新品の沸点)
- ウェット沸点:吸湿率3.7%の数値(1~2年使用後の沸点)
これはどのフルードも商品パッケージに記載されています。
沸点が下がることで「ベーパーロック現象」が発生しやすくなります。これが経過年数による交換が必要な理由です。
交換にかかる費用
- ホースライン1箇所につき:2000円
交換を業者に依頼した場合は、ホースラインの数で計算されます。主にキャリパーの数だと思っていただいて大丈夫です。
しかしPCXなどのコンビブレーキを採用している車体は、1つのキャリパーにホースが2本使われていることもあります。
交換に必要な道具
ブレーキフルード
ブレーキフルードの選び方
ブレーキフルードはメーカー指定のものを使用しましょう。マスタシリンダーの蓋に記載がありますので簡単に調べられます。
1箇所につき200mlを目安に
交換に必要な量は「ブレーキライン1箇所につき200ml」で考えましょう。
先述の通り吸湿性がありますので使い切れる量を用意しましょう。
オススメのブレーキフルード
一般使用での範囲内であれば、メーカー毎に大きな違いはありません。より高性能がいいのであれば「ドライ沸点/ウェット沸点」が高いものにしましょう。
中には「色付き」のフルードもあります。カスタム感を演出できるのでこちらもオススメです。(筆者は1台使っています。)
注射器
フルードの交換時間を短縮でき、安価で購入できる便利アイテムです。
この記事ではこちらを使用し交換します。
養生道具
ブレーキフルードは、塗装面への攻撃性が高く養生は必須です。
どちらもメンテナンスで使うことが多いので、持っていても損はないでしょう。
水
塗装面へ付着してしまったときに洗い流すために使用します。500mlくらいはあった方がいいでしょう。
交換方法
- 外装を養生する
- タンクの蓋を外す
- 付属品の洗浄
- タンク内のフルードを交換する
- ホース内のフルードを交換する
- ブレーキ復帰とエア抜きを行う
- 油面を合わせて、蓋を戻す
作業上の注意点
タンク内のフルード残量を意識しよう
フルード交換で最も厄介なのが「エア抜き」です。なので作業中にオイルラインへエアが混入しないように気をつけます。
混入させないポイントは「タンク内にフルードがない状態を防ぐ」ことです。
エア混入はタンク内が空の状態でブレーキを握ったり、下から吸いだしてしまったりすることが原因です。
交換作業中は、常にタンクの中に注意を払うようにしましょう。
塗装面へかかったらすぐに洗い流すこと
ブレーキフルードは塗装面への攻撃性が非常に高く、塗装を簡単に溶かしてしまいます。
ポイントは塗装面をしっかり養生する、すぐに洗い流すことです。
遠くのブレーキライン(キャリパー)から交換しよう
Wディスクなど、ブレーキラインは途中から分岐するものや、キャリパーを経由してから別のキャリパーへいくものと様々です。
マスターシリンダーから一番遠くのラインから交換することで、効率よく作業することができます。これはフルード交換の基本事項です。
外装を養生しよう
フルードが垂れてしまってもいいように、マスターシリンダー付近の養生をします。ここでは「表面保護材」を使用しています。
濡らして絞ったペーパーウエスをタンクへ巻きつけることで、溢れても下へ垂れず吸い取ってくれます。
タンクは水平に保とう
作業中はタンクを水平に保ちましょう。ハンドルが動いてしまう場合はタイヤに置き物をおいて固定しましょう。
タンクの蓋を外す
マスターシリンダー上部の皿ビス2本を緩め蓋を外していきます。
皿ビスはなめやすいので注意
皿ビスはプラスドライバーで緩めるものが多く、”非常になめやすい”ので注意です。
下に押す力9割、回す力1割で力をかけると失敗しにくいです。
とにかく無理をしないのがポイントです。
ショックドライバーが便利
サビなどの固着によりどうしても外せないものが中にはあります。
無理そうだと感じたらすぐに「ショックドライバー」を使用しましょう。
付属品の洗浄
蓋を外すとダイヤフラム(ゴムの部品)、プレートが出てくるはずです。
蓋も含めた3点は水洗いをし、水分を拭き取っておきましょう。
ダイヤフラムの変形がひどい場合は交換しよう
経年劣化によりダイヤフラムは変形したり溶けたりします。劣化が激しいようであれば交換しましょう。
タンク内のフルードを交換する
ブレーキラインへ汚れたフルードや異物が混入しないように、まずはタンク内のフルードを交換します。
エアブリーダーにホースを取り付ける
ブレーキフルードは、キャリパーについている「エアブリーダー」を緩めて抜きます。
ブリーダーについているキャップを外し、メガネレンチを入れ、ホースを差し込みます。これで準備は完了です。
ブリーダーからフルードを抜く
ブリーダーを緩める方向(半時計周り)に回し、注射器を使いフルードを抜いていきます。適度なタイミングで新しいフルードをタンクに補充しましょう。
タンク内の残量に気をつけよう
タンク内のフルードが空にならないように気をつけましょう。(作業上の注意点を参照)
キレイなフルードが出てくるまで繰り返す
キレイなフルードが出てくるようになれば交換完了です。ブリーダーを締めるのを忘れず。
ブレーキ復帰&エア抜きを行う
交換後は必ずブレーキの復帰をします。ブレーキをタッチが出るまで数回握りましょう。
ブレーキのタッチが出ない場合は「エア噛み」をしているかもしれません。振動を与えたり、再度フルードを交換したりしてエア抜きを行いましょう。
ブレーキタッチが出たら
ブレーキを握った状態で、ブリーダーを緩めて直ぐに締め、再度タッチが出るまで握る。
最後にこの工程を数回行いましょう。より確実なエア抜きができます。
抜けたフルードに注目しよう
ホースの中を確認し、フルードにエアが混入していなければ交換完了です。
油面を合わせて、蓋を戻す
タンク内のフルードをアッパーレベルまで補充します。
最後に蓋を締めます。ダイヤフラムとプレートを事前に組み込み、それから蓋を取り付けます。
余分なフルードは拭き取ろう
蓋を締めると、フチ周りにフルードがシミ出てくることがありますので拭き取りましょう。
最終確認
- ブレーキの動作は正常ですか?
- ブリーダーのキャップは付けましたか?
- フルードの拭き忘れはありませんか?
車検ごとの交換をこころがけよう!
ブレーキフルードの交換を紹介させていただきました。
最初は難しく感じると思いますが、注意点をしっかりと抑えればさほど難しい作業ではありません。特にブレーキの復帰とエア抜きは必要以上にしっかりと行いましょう。
交換の目安は1〜2年ごとですので、車検と同時に行うなど定期的な交換を心がけたいですね。
感想・質問などはTwitter(@kyosuke400)にて受け付けておりますので気楽に連絡ください♪